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2025.01.17

アスベスト(石綿)規制と法改正の背景を解説~労働安全衛生法・大気汚染防止法のポイント~

”セミナー風景”

1.アスベスト法の概要

アスベスト(石綿)による健康被害を防止するために、厚生労働省と環境省は、工事現場でのアスベスト飛散防止や安全管理、適切な廃棄処理などを義務付ける法令を定めています。これらの法令に違反した場合には、罰則が科されるため、事業者は法令を守り、安全で適切な施工を行うことが重要です。

1.1 労働安全衛生法の「石綿障害予防規則」とは?~厚生労働省のアスベスト対策~

労働安全衛生法に基づく石綿障害予防規則は、特に内装工事などの工事現場で働く労働者がアスベストにさらされることを防ぐために設けられています。この規則により、アスベストを含む建材を扱う作業について、厳しい安全基準と対策が義務付けられています。
主な規制内容
アスベスト含有建材の製造、輸入、使用の原則禁止: 一部の例外を除き、アスベストを含む建材の製造、輸入、使用は禁止されています。
解体・改修工事における事前計画届出と飛散防止策: アスベストを含む建材を扱う解体・改修工事を行う場合には、事前に計画を届け出て、飛散防止策を講じることが義務付けられています。
作業員の防護具着用と作業場の隔離: 作業員は、防塵マスクや保護服などの適切な防護具を着用し、作業場は他の区域から隔離するなど、安全確保を徹底しなければなりません。
罰則
規制に違反した場合、事業者には罰金などが科される可能性があります。特に、作業員の健康を軽視し、安全対策を怠った場合には、より重い罰則が適用されることがあります。

1.2 「大気汚染防止法」とアスベスト規制の関係~環境省の取り組み~

大気汚染防止法では、アスベストが空気中に飛散して周辺住民の健康を害することを防ぐため、アスベスト含有建材の取り扱いに関する規制を定めています。環境省は、この法律に基づき、工事現場でのアスベスト飛散防止に関する具体的な規制を定めています。
主な規制内容
工事前の届出: アスベストを含む建材の解体や改修工事を行う場合には、事前に都道府県知事に届出を行うことが義務付けられています。
飛散防止措置: 工事中は、飛散防止ネットの設置、散水による抑制、負圧作業などの措置を講じ、アスベストの飛散を防止しなければなりません。
環境基準: 大気中におけるアスベストの濃度に関する環境基準が定められており、この基準を超えるような飛散は禁止されています。
罰則
法律に違反し、アスベストが飛散して環境基準を超えた場合、事業者には罰金や業務停止命令などの行政処分が科されることがあります。また、周辺住民への健康被害が生じた場合は、損害賠償責任を問われる可能性もあります。

1.3 アスベスト廃棄処理の基準~「廃棄物処理法」のポイント~

廃棄物処理法では、アスベストを含む廃棄物を適切に処理し、環境汚染や人への健康被害を防ぐため、厳格な規制が定められています。アスベスト廃棄物は、その有害性から「特別管理産業廃棄物」に指定されており、他の産業廃棄物と区別して厳重な管理の下で処理が行われます。
主な規制内容
密閉梱包と許可業者による処理: アスベスト廃棄物は、飛散防止のため密閉梱包され、許可を受けた業者のみが収集・運搬・処分を行うことが義務付けられています。
廃棄処分方法: 廃棄処分方法は、埋立処分が一般的ですが、溶融処理や無害化処理といった他の方法も認められています。
飛散防止対策: 廃棄物処理の全工程において、飛散防止のための様々な対策が講じられます。例えば、湿潤化処理、固型化処理、負圧作業などが挙げられます。
許可基準: 廃棄物処理業者に対しては、技術基準や施設基準が設けられており、これらの基準を満たした業者だけが、アスベスト廃棄物の処理を行うことができます。
記録の保存: 処理に関する記録は、一定期間保存することが義務付けられています。

2.これまでのアスベスト法改正の経緯と背景

過去のアスベスト法に関する改正の経緯と背景を、年代別に見ていきましょう

2.1 アスベスト規制の始まり~「大気汚染防止法」制定(1968年)~

1968年に制定された大気汚染防止法は、アスベストを含む物質が環境に与える影響への対策として、初めてアスベスト粉じんの飛散防止を法的に管理しました。しかし、当初は規制が緩やかであり、その後、段階的に強化されていきます。

2.2 労働環境でのアスベスト防止~「労働安全衛生法」の導入(1972年)~

1972年に制定された労働安全衛生法は、アスベストの取り扱いに従事する労働者の健康を守るため、予防措置や安全対策を企業に義務付けました。これにより、アスベストの製造や使用における労働者の安全確保が重視されるようになりました。
2.3 アスベスト製品の使用禁止~特定化学物質等障害予防規則の改正(1975年)~
1975年に特定化学物質等障害予防規則が改正され、アスベストの吹き付け作業が規制されました。これが、アスベスト規制の大きな転換点となり、以降、段階的に規制が強化されていきます。

2.4 アスベスト製品の使用禁止~全面禁止施行(2005年)~

2005年には大気汚染防止法および労働安全衛生法が改正され、アスベスト含有製品の製造・使用が全面的に禁止されました。これは、アスベストの危険性が広く認知され、健康被害が深刻化したことを背景としています。

2.5 「石綿障害予防規則」施行と防止策の強化(2006年)

2006年には石綿障害予防規則が施行され、アスベストの解体・撤去・修理作業における飛散防止措置が厳しく義務付けられました。また、アスベスト作業主任者の配置が義務化され、資格を持つ専門家が管理を行うことが求められるようになりました。

3.最新のアスベスト法改正をわかりやすく解説

近年では、アスベストによる健康被害を防ぐため、アスベスト法が段階的に改正されています。主な改正点と目的は以下の通りです。

3.1 アスベスト事前調査の義務化と「レベル3建材」規制強化~2021年改正~

2021年4月に大気汚染防止法の法改正が行われ、解体・改修工事の前にアスベストの事前調査が義務化されました。また、調査結果の報告と記録保存も必須となりました。さらに、規制対象がレベル3にも拡大され、より多くの建材が対象に含まれるようになりました。

3.2 調査報告の義務化と工事完了時の記録義務~2022年の法改正内容~

2022年4月からは事前調査と報告の対象が拡大され、より幅広い工事に対して調査義務が課されました。加えて、工事完了後に有資格者による確認検査が義務化され、作業内容の記録保存も必須となっています。

3.3 資格制度による事前調査の徹底化と記録保存強化~2023年最新改正のポイント~

最新の2023年10月の改正では、無資格者によるアスベスト事前調査が禁止され、資格保有者のみが事前調査・報告を担当できるようになりました。一般住宅も対象に含め、記録の義務化がさらに強化され、正確な調査と記録が求められています。
これらの改正により、調査・報告・記録保存を徹底することで、アスベストによるリスクを低減し、現場の安全性向上が図られています。

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