大規模修繕工事って何するの?工事内容や流れを徹底解説

大規模修繕工事って何するの?工事内容や流れを相栄建総が徹底解説致します!

 

本記事では『大規模修繕工事』について詳しく解説させていただきます。
世の中のマンションはどれだけ頑丈に造られていたとしても、日々雨風や日光の影響を受け、少しずつ変化し、劣化していきます。そのため、適切な時期にきちんと修繕をして、建物の安全性と資産価値を維持していく必要があります。工事とひとくちに言ってもいろいろな種類がありますが、その中でも足場を掛けて行う大掛かりな工事を『大規模修繕』と呼びます。また、『大規模修繕工事』といってもさまざまな工事内容で構成されているうえ、実施するタイミングや状態によって、修繕する箇所はさまざま異なります。

大切なマンションを綺麗で安全に維持するためにも、適切なタイミングで、適切な箇所の修繕工事をしたいですよね。そのためには大規模修繕工事本来の目的や内容、流れをきちんと把握しておくことが重要です。そこで本記事では、大規模修繕工事とは一体そういう工事をするのか、費用の目安はどれくらいなのか、主な内容はどうなのか、などについてご紹介していきます。

■1 大規模修繕工事とは?

大規模修繕

そもそも『大規模修繕工事』とは、築年数の経過によって起こってしまう建物の劣化を防ぐことを目的にして行われる工事のことです。基本的にどのマンションも、耐震性や防水性は最低限保証されています。(建築基準法に基づいて建築されているためです)しかし、どれだけ優れた建築資材を使っているマンションであっても、築年数の経過とともに進む経年変化を防ぐことは不可能です。

また、分譲マンションの場合は管理組合が修繕計画を主導することが一般的です。そのなかでも足場を掛けるような、特に大掛かりな工事を『大規模修繕工事』と呼びます。たとえば、外壁補修、防水工事、シーリング工事、鉄部の塗装工事、給排水管工事などを実施する際が多いです。大規模修繕の対象となるのは主にマンションの共用部分ですが、大規模修繕工事は工事の期間が長く、工事費用も高額になるため、きちんと計画性をもって行うことが重要です。

■1-1 「修繕」と「改修」の違いについて

大規模修繕工事と聞くと、「修繕」や「改修」といった異なるワードを耳にすることが多いですが、その違いは一体何なのでしょうか。

まず今回の題材である『大規模修繕工事』にも含まれている「修繕」とは、基本的に「機能と性能を建築当時の水準まで回復させる」ことを目的とした工事です。不具合が発生している箇所や傷んでいる箇所について、部材の取り替えなどを行い、問題なく使用できる状態まで回復させます。

一方「改修」とは、機能の維持や回復だけではなく、建物全体の機能や性能面をさらにより良く改善し、人が住みやすいマンションにしていくことを目的とする工事です。建設してから月日が経つなかで、環境や人の暮らし方にも少しずつ変化が出てきますし、設備や材料も時代とともに進歩し、建物の性能も大きく向上していきます。改修工事では修繕工事による機能の回復に加えて、設備や性能をグレードアップし、現在の水準に見合うようにマンションを進化させます。資産価値の向上にも繋がるので、大切なポイントです。

 

■1-2 大規模修繕工事が必要といわれる理由は?

マンションにも当然寿命があります。頑丈な造りであっても、風雨や日光の影響を受け続けると、月日とともに少しずつ劣化が進みます。こうした経年劣化による影響をできるだけ抑えながら、建物をできるだけ長く安全に使っていくためにも、定期的にメンテナンスをする必要があります。

建物を安全に守っていく上で一番大切なのは、コンクリート内部の劣化を抑制することです。コンクリートの内部には鉄筋がいくつもあり、これが錆びることで建物の強度が格段に弱くなります。通常は建物の外部から内部にかけて徐々に劣化が進んでいくのですが、ちょっとしたひび割れや亀裂などがあると、そこから水や空気が入り込み、劣化が進行してしまいます。こうした深刻な劣化を予防するためには、軽度のうちに欠陥を発見し、直すことが第一優先です。大規模修繕工事は大掛かりな工事になりますが、非常に大切な工程です。

また、大規模修繕工事は、マンションの資産価値を保つことにも繋がります。経年劣化は放置すればするほど酷くなってしまうので、欠陥を見つけて即座に大規模修繕工事をしてきたマンションとそうでないマンションでは、見た目や過ごしやすさの面で、大きく差が開いてしまいます。

 

■2 大規模修繕工事をするうえで大切な3つのポイント

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適切な修繕工事をおこなうためには、依頼をする前に目的や工事内容をきちんと把握しておくことが重要です。ここからは大規模修繕工事の内容や費用の目安などを3つご紹介していきます。

 

■2-1 大規模修繕工事にかかる費用相場はどのくらい?

大規模修繕工事にかかる費用は、1戸あたり100万円前後が相場だといわれています。マンションの規模によっても異なりますが、総額では数千万~億単位になる場合もあります。ただし、一般的には、マンションの管理組合が「修繕積立金」として毎月徴収し、積み立てています。区分所有者が大規模修繕工事の際に費用を一括で支払わなければならないということはほとんどありませんのでご安心ください。
一部の人だけ支払えないという問題が起こりトラブルの原因にもなりますし、そのような事態を避けるために、管理費と同じように毎月徴収して1回あたりに支払う負担を軽くしているという仕組みなのです。

 

■2-2 大規模修繕工事の工事期間はどのくらいかかる?

マンションの大規模修繕工事にかかる期間は、「計画から着工まで」と「着工から工事完了まで」の大きく2つに分けられます。大規模修繕工事では共用部分の工事がメインになるので多くの人に影響が及ぶため、住人の方の同意なしには工事は進みません。

住人の方の同意を得るためには、まずはじめに工事計画を作成し、対象者に向けた説明会を開催し、全員の理解を得る必要があります。そのため、計画から着工までは1~2年程度かかる場合が多いです。

また着工後は建物周囲に足場が建ち、作業員や車両などが頻繁に出入りをするようになります。工事がはじまったら、洗濯物や換気、バルコニーの置物などに、一部制限がかかることもあります。着工から工事完了までの期間は50戸以下の小規模マンションの場合は3~4ヶ月程度、50戸以上の大規模マンションなら4ヶ月〜が目安です。

 

■2-3 大規模修繕工事の周期と回数は?

一般的には12~15年周期だと言われていますが、理由としては、国土交通省が発表している「長期修繕計画作成ガイドライン」で示されているからです。また、新築時の建材の保証期間が、10年程度で設定されているケースが多いことも要因のひとつです。
大規模修繕工事の時期や回数に、これといった決まりは特別ありません。基本的にはマンションの劣化状況に応じて各管理組合が主導し、実施するかどうかを判断します。

近年は材料もどんどん進化しているので、大規模修繕工事の際に耐久性や防汚効果に優れた製品を用いることで、次の修繕までの周期を15年、18年と延ばし、修繕費用を抑えるという工夫を検討するマンションも多いです。

実際に修繕に取り掛かるかどうかは現在の建物の状態を見て、的確に判断する必要がありますが、前回の修繕工事から10年を超えたあたりから、次の大規模修繕工事の実施について協議をはじめるとタイミングも良いかもしれません。

 

■3 大規模修繕工事の内容

大規模修繕の流れ

■3-1 大規模修繕工事の大まかな流れについて

まずはじめに、管理組合内での大規模修繕工事を実施するための体制づくりが必要です。管理組合内の体制がきちんと固まったら、次に「現状調査」をして、その結果に基づいて予算や修繕計画の立案を行います。現状調査をすると、なかには早急に対処しなければいけない箇所と、機能を維持できていることから緊急性を要しない箇所に分かれます。現状調査を通して、早めに修繕する箇所の優先順位をつけて、実施計画を作成しなければなりません。適切な大規模修繕工事を行うためには、現状調査の段階から専門知識を持った人に参加をしてもらい、その方のアドバイスを取り入れながら計画案を作成することがおすすめです。その後は施工会社を選定し、住人向けの工事説明会を開催し、着工に移ります。

 

■3-2 ①:仮設工事

工事が始まったときに、まず最初に行われるのが仮設工事です。仮設工事では、足場や現場事務所などの仮設の設備を設置します。かなりの力仕事かつ繊細な作業を行う作業員にとって、足場は非常に重要なものです。また、メッシュシートには落下物防止、塗料の飛散防止といった役割があります。いずれも工事の品質を確保するためには欠かせない大切な設備です。

 

■3-3 ②:下地補修工事

下地補修工事では、壁や天井などコンクリート躯体部分に生じたひび割れなどの劣化部分を補修します。仕上げの塗装をどれだけきれいに仕上げても、下地の状態が良くないと症状がすぐ再発するといったことにもなりかねません。建物の耐久性や寿命にもかかわる大切な工程ですし、下地補修の良否は後の工程にも大きく影響します。

 

■3-4 ③:タイル補修工事

建物の年数が経つと、タイルが下地から浮いてしまったり、ひび割れることが多々あります。そのまま放ってしまうと、ひびから入った雨水がコンクリートを傷めてしまったり、剥がれたタイルやコンクリートが落下し、最悪の場合通行人に危険が及ぶ可能性もあります。

 

■3-5 ④:シーリング工事

シーリング材は、外壁のつなぎ目やサッシ廻りに使用されることが多いです。年数が経つことで硬化してひび割れやすくなります。雨水やほこりなどの汚れはほんのわずかな隙間からも侵入するので、見た目からは異常が分からなくても、サッシと壁の間や外壁のわずかな隙間が雨漏りの原因になるケースも多く挙げられています。

また、工事には足場が必要なので、大規模修繕工事の際に一緒に打ち替えをするのが一般的です。シーリング材を新しくすることで躯体や室内への雨水等の侵入を防ぐほか、建物の気密性が高まり、断熱性の向上も期待できます。

 

■3-6 ⑤:外壁塗装工事

塗装には、雨水や汚れからマンションを守るという役割があります。劣化が進むにつれ塗装が剥がれ、その部分から侵入した雨水などがコンクリートを徐々に傷めていきます。
付着力に問題がない場合は上から塗り重ねますが、付着力が弱い場合には現状の塗料を除去し、新たに塗装をします。

 

■3-7 ⑥:鉄部の塗装工事

鉄部は扉や外部の階段、手すりなどに使用されることが多く、年数が経過すると錆びが発生し、見た目や耐久性に問題を引き起こす場合が多いです。錆が発生している箇所はサンドペーパーやワイヤーブラシなどを使って丁寧に錆びを落とし、塗装を重ねてしっかり保護をすることで、耐久性が改善します。

 

■3-8 ⑦:防水工事

コンクリートは耐久性に優れていますが、経年で生じたひびなどから内部に水が浸入してしまうと、構造部へのダメージを引き起こします。そのため、雨風に晒される屋上やバルコニー、廊下といった箇所には防水工事を行い、雨水や汚れなどからコンクリートを守らなければなりません。防水層に破れやシワなどの症状が見られる場合は、早めの修繕をおすすめします。

 

■3-9 その他の付随工事

上記以外にも、玄関扉やサッシの交換、エントランスの改修工事、給排水管の更新工事など、必要に応じて工事を行うケースがあります。
オートロック設置や、バリアフリー化なども人気の項目です。
また、玄関扉やサッシの交換工事は見た目がきれいになることはもちろん、「玄関ドアが軽くなった」「エアコンの効きめが良くなって嬉しい」など、メリットを実感しやすいので、人気の高い項目です。
大規模修繕工事の際は、劣化部分の補修工事はもちろんですが、機能面の改善や流行の設備を取り入れることで快適性や安全性を高めることができるので、おすすめです。

 

■4 2回目以降の大規模修繕工事について

大規模修繕工事は、1回目と2回目では実施する内容も多少異なります。新築物件ではじめての補修ですと、基本的な内容を実施する場合がほとんどです。しかし築10〜15年を経過したタイミングで実施する2回目以降の工事では、雨や紫外線などの影響を多く受けて劣化しているので、1回目の工事よりも手の込んだ内容が必要になります。

さらに3回目を迎える頃には、劣化症状が酷くなっていますし、玄関ドア、サッシ、給排水管、電気設備なども更新の時期を迎える頃です。今後を見据えた時に建物にとっても大きな節目なので、早いうちから備えておくことが大切です。

■5 大規模修繕工事の際に起こりやすいトラブルは?事前にできる対策はある?

トラブル

■5-1 「途中で施工箇所が増えてしまい、予算を大幅に超えてしまいそう」

工事項目の中には、実際に現場に足場が建ってからでないと劣化の状況を直接確認できない箇所もあります。そのため、当初の予定から工事金額が増減してしまうケースがあります。(場合によっては減額もあります。)ただし、なるべくこうした事態を避けるためにも、事前にきちんと建物診断を行っておくと良いでしょう。現在の建物の状態を踏まえて、適切な補修と機能向上が図れるよう資金面とのバランスも考えながら工事の内容を計画していくことが大切です。

 

■5-2 「仕上がりが希望通りではなかった」

工事が終わった段階で希望通りではない仕上がりだとがっかりしますよね。そのようなトラブルを避けるためにも、事前に材料のサンプルが手に入る場合は確認しましょう。サンプルは、屋外の日当たりや日陰など実際の使用環境に近い環境で確認すると、より近しいイメージで確認することができます。
施工前にサンプルを作成し、色、柄、質感、目地の色などを現状のタイルとよく比較検討しましょう。

 

■5-3 「トラブルが発生してしまった」

どれだけ知識をもって万全の準備をしていても、いざ工事が始まると、想定していなかった事態が発生することもあります。そういった場合は、慌てずにまず施工会社など、工事の窓口となっている担当者に相談してください。工事中は進捗状況や仕様に関する確認、住人の方の気づきやご意見など、関係する業者とは常にコミュニケーションをとりながら進めていくことが大切です。少しのひと手間で全体の流れがスムーズに運べるようになります。

 

■6 大規模修繕工事についてよくある質問

大規模修繕工事を行う上で、多く挙げられる質問をまとめてみました。

Q.洗濯物は干せますか?
A.洗濯物は各工事部分、内容によって一部制限させていただく場合がございます。事前にご説明させていただきますのでご安心ください。
Q.工事中は家にいなければいけませんか?
A.基本的には外出されて問題ありません。しかし、工事部分によってはご在宅いただかないと作業ができない場合がありますが、その際は事前にご都合の良い日程をお伺いさせていただきます。
Q.シートで部屋が暗くなりますか?
A.飛散防止のためにシートを張らせていただきますが、透過性の良いシートを使用しておりますので、大きく影響はありません。ご安心ください。
Q.バルコニーに置いてある荷物はそのままでも大丈夫ですか?
A.バルコニーのお荷物に関しては、基本的に室内に置いていただくようにお願いしています。落下防止、事故防止などの観点からですので、ご理解いただけると幸いです。

 

■7 まとめ

まとめ

『大規模修繕工事』について、費用や工事内容、流れなどを解説してきました。
大規模修繕工事は劣化補修だけに留まらず、住人の方の日々の生活の安心と安全、快適さ、そしてマンションの資産価値を守るため、建物の寿命にも影響するとても大切な工事です。
マンションの大規模修繕工事にかかる費用は、決して安いものではありません。大規模修繕はおよそ12年周期で行われるため、費用をしっかりと確保できるように積み立てていかなければなりませんし、修繕工事の費用をなるべく抑えるためには、施工不良を防ぐことも大切です。

費用相場や工事の内容などの専門的な知識も必要になってくるので、修繕のタイミングを見定めるのが難しい場合もあるかと思いますが、大規模修繕工事の施工実績が豊富な専門業者に依頼をするなどして、工事が大掛かりになる前に建物をよくチェックし、快適な住まいを守ってください。