東京都台東区のマンション管理実態と管理士が果たすべき役割〜現状・課題・適正化への道筋〜

1.はじめに

東京都台東区では、マンションストックの老朽化が急速に進行しています。特に昭和56年(1981年)以前に建てられた「旧耐震基準」の建物が一定数存在し、今後さらに築50年超のマンションが急増することが予測されます。台東区が令和4年度に実施した実態調査によれば、現在約1,400戸(約110棟)ある築50年超の分譲・賃貸マンションが、20年後には約26,000戸(約1,700棟)に達する見込みです。

このような背景のもと、台東区はマンションの良好な管理と維持を推進すべく、「マンション実態調査」や「管理適正化に向けた方策の検討」を行ってきました。加えて、国が進める「マンション管理適正化法」の改正や「管理計画認定制度」の運用開始もあり、区としても中長期的な施策を立案する必要性が高まっています。

この記事では、台東区の分譲マンションの実態や現状の課題を確認しながら、マンション管理士として今後果たすべき役割を整理します。地域の特性に即したアプローチを検討する上でも、本稿が現場支援の一助となることを目的としています。

2. 区内分譲マンションの実態

台東区のマンションストック状況

台東区には、令和4年度の調査時点で分譲マンションが1,861棟・53,938戸、賃貸マンションが2,622棟・33,968戸存在しています。地域別にみると、分譲・賃貸ともに浅草・中部地域に集中しており、北部地域には特に賃貸が多く立地しています。

建築時期別の傾向

マンション供給には時代ごとの経済状況が反映されています。

  • 1980年代後半(バブル期)には、小規模マンションが多く供給され、棟数が増加。
  • 2000年頃〜リーマンショック前には、戸数規模の大きなマンションが多く建設され、戸数が増加。
  • リーマンショック以降は一時供給が停滞したが、再び増加傾向となっています。

将来的には、旧耐震基準に該当する建物が全体の約20%、分譲の約10%、賃貸の約15%が部分的または全体的な破損を抱えていることが指摘されています。

建物構造・規模の内訳

  • 建物構造は「鉄筋コンクリート造(RC造)」が主流で、分譲マンションの約75%以上を占めています。
  • 規模では、「15戸未満の小規模マンション」が相当数存在しており、特に賃貸では9戸/棟以下が多数を占めています。

管理組合の現状(アンケートより)

アンケート調査から、分譲マンションの管理組合に関する次のような傾向が明らかになっています。

  • 管理組合が存在しないマンション:6.7%
  • 管理規約が存在しないマンション:3.8%

特に1990年以前に建てられたマンションや、14戸以下の小規模マンションでは管理組合の不存在率が高く、これが今後の適正管理の障壁になると見られます。

また、管理会社に業務を委託している割合は全体の約9割と高水準ではあるものの、「築年数が古い」または「小規模」である物件では自主管理の割合も相応に存在しています。

以上のように、台東区では老朽化・小規模化・管理体制の未整備という三重苦に直面しており、早期の対応が必要とされています。

3. 長期修繕計画と資金計画の実態

マンションの健全な維持管理を実現する上で、長期修繕計画とそれに基づく資金計画の策定は極めて重要です。台東区における実態調査からは、これらの整備状況について一定の課題が浮かび上がっています。

長期修繕計画の策定率と課題

調査によれば、長期修繕計画を作成していない管理組合は全体の6.7%にとどまります。これは東京都が示す「管理不全予防のための必須事項」において最低限求められる整備状況をおおむね満たしていると評価できます。

一方で、1970年代に建てられたマンションのうち、約1割が大規模修繕を一度も実施していないという実態も明らかとなっており、特に高経年マンションの修繕実施率には注意が必要です。

修繕積立金の運用実態

修繕積立金については、「積み立てていない」と回答したマンションは0.4%とごくわずかであるものの、修繕積立金の水準が国のガイドラインに満たないマンションが約2割存在している点が課題です。具体的には、1㎡あたりの修繕積立金額が以下の目安に達していないケースが多く見受けられました。

  • 15階未満・延べ面積5,000㎡未満:目安額 165~250円/㎡
  • 15階未満・延べ面積5,000~10,000㎡:目安額 140~265円/㎡
  • 15階未満・延べ面積10,000㎡以上:目安額 135~220円/㎡

このような水準に達していない場合、将来的な大規模修繕の際に不足が生じ、一時金徴収や修繕内容の縮小といった問題を招く可能性があるため、専門的な助言による見直しが求められます​。

4. 顕在化する管理不全リスクと要支援マンション

長期修繕計画や積立金の整備状況に続き、台東区では管理不全のリスクが徐々に顕在化しつつある状況が確認されています。

管理不全の兆候と背景

台東区の調査によれば、次のような基礎的な管理機能が欠如しているマンションの割合が明らかとなっています。

  • 管理組合が存在しないマンション:6.7%
  • 管理規約が整備されていないマンション:3.8%
  • 理事長などの管理者が不在のマンション:6.5%
  • 年1回以上の総会を開催していないマンション:1.1%
  • 大規模修繕工事を一度も実施していないマンション:31.6%

とくに、これらの項目を2つ以上満たさないマンションについては、将来的に「要支援マンション」として公的な支援が必要となる可能性が高いといえます。

また、戸数が5戸以下や面積25~39㎡の小規模マンションに、管理組合や規約が存在しない傾向が見られ、小規模物件ほど管理不全に陥るリスクが高まることも重要な知見です。

管理不全が及ぼす影響

管理不全は、建物の物理的劣化だけでなく、資産価値の低下や住環境の悪化を引き起こす要因となります。特に都市部における高密度住宅では、一棟が崩れることで周辺への波及的な影響も無視できません。

こうした事態に陥る前に、マンション管理士が外部専門家として管理の体制強化や制度整備のサポートを行うことが不可欠です。とくに、適切な管理者の選任や管理規約の整備を支援することで、問題の早期発見・予防が可能になります。

5. 台東区が用意する支援策と管理士の介入ポイント

台東区では、分譲マンションの高経年化が進む中で、マンション管理に関する実態調査を踏まえ、将来的な支援施策の方向性を探っています。現時点では具体的な制度として整備されているものは少ないものの、区は今後の取り組みとして次のような支援策を検討・準備しています。

まず、マンション管理に対する住民の理解を促進するために、セミナーや説明会、啓発資料の配布などを通じた情報提供の強化が進められています。特に、修繕積立金や長期修繕計画の必要性、管理規約の整備といった基本的な内容について、住民が知識を得る機会が設けられることが重要視されています。

また、国が推進する「マンション管理計画認定制度」に対応する形で、台東区としても認定取得支援や申請サポート体制の整備が今後の課題とされています。これにより、管理状況の「見える化」が進み、区としても課題のあるマンションを把握しやすくなると期待されています。

さらに、区の調査報告では、管理組合が機能していない、管理者が選任されていない、総会が開催されていないといった“要支援”状態のマンションが存在していることが明らかになっています。こうした状況に対し、外部専門家の助言を得られる支援制度の構築が必要とされています。

ここで、マンション管理士が果たすべき役割が浮かび上がります。区が支援制度を整えるにあたっては、マンション管理士の専門的知見と現場対応力が不可欠であり、次のような介入が想定されます。

  • 管理規約未整備のマンションへのモデル規約導入支援
  • 自主管理マンションへの総会開催支援や合意形成のファシリテーション
  • 修繕積立金不足の課題に対する積立額見直しと住民説明
  • 管理計画認定制度に基づく診断・助言の提供

台東区における支援の中核には、制度的な整備とともに、“現場で機能する支援”が不可欠であり、それを担うのがマンション管理士であるという意識が求められます。

6. マンション管理士が果たすべき現場での役割

台東区のように高経年・小規模マンションが多数を占める地域において、マンション管理士が果たす役割は非常に多岐にわたります。その中でも、最も重視すべきは「管理不全の予防」と「組合の自立支援」です。

管理士の活動の第一歩は、実態の正確な把握です。たとえば、総会が数年開かれていない、理事が不在、修繕積立金がほとんどないといったマンションでは、住民が問題を自覚できていないケースも少なくありません。そうした現場に入り、現状分析からスタートすることが重要です。

そのうえで、管理士は単なる指摘者ではなく、合意形成を導くコーディネーターとしての役割を担います。意見が割れやすい小規模マンションや高齢住民の多い物件では、議論の進め方や情報提供の仕方に配慮が求められます。中立的立場で住民の声を汲み取り、対話の場を設計することが求められるのです。

さらに、実務面での具体支援も不可欠です。たとえば長期修繕計画の作成支援では、建築的な知見を踏まえて、現実的な工事周期と資金積立のモデルを提示する必要があります。また、修繕積立金の不足を抱えるマンションには、段階的な見直し案や金融機関との協議支援なども視野に入ります。

加えて、台東区のように行政支援がまだ整備途上にある地域では、管理士自身が制度設計と現場実務をつなぐ橋渡し役になることも期待されます。区と連携して、支援制度のあり方を提案したり、モデルケースを提示したりといった活動が、他のマンションへの波及効果を生む可能性もあります。

結局のところ、管理士に求められるのは、問題を特定する力、住民に伝える力、そして実行を支える力です。台東区という都市型・高経年エリアでは、それらを柔軟に組み合わせ、マンションごとの状況に応じた「オーダーメイド型支援」がカギを握ります。

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