品川区の下地補修工事が重要な理由 建物の耐久性と安全性を高める補修のポイント

1. はじめに

東京都品川区では、多くの都市部と同様に、分譲マンションが重要な居住形態として定着しています。しかし、その一方で、建物の老朽化と居住者の高齢化、いわゆる「二つの老い」 が進行しており、マンション管理における課題が顕在化しつつあります。

品川区の推計によれば、区内のマンション戸数は約63,000戸にのぼり、そのうち築50年以上の高経年マンションは約2,700戸存在します。この数は、10年後には5倍、20年後には15倍に急増すると予測されており、マンションの維持管理や再生は、喫緊の課題となっています。

このような状況下で、マンションが適切に維持管理されない場合、建物の劣化による居住環境の悪化はもちろん、外壁の剥落などによる第三者への危害、さらには周辺の住環境や都市景観への悪影響といった、深刻な問題を引き起こすリスクが高まります。

こうした背景を踏まえ、国は令和2年6月にマンション管理適正化法を改正し、マンション管理の適正化を推進するための新たな枠組みを設けました。これを受け、品川区でも「品川区マンション管理適正化推進計画」を策定し、管理不全の未然防止と、管理組合による自律的かつ適正な管理の促進を目指しています。この計画は、国が示す基本方針に基づき、区の実情に合わせた目標設定や施策を盛り込んでいます。

この記事では、品川区におけるマンション管理の現状と課題を、区が実施した実態調査の結果などを基に明らかにします。そして、現場で活躍されているマンション管理士の皆様が、これらの状況を踏まえ、今後どのように管理組合への支援や介入を行っていくべきか、その役割と具体的なアプローチについて考察します。

地域におけるマンション管理適正化の担い手として、マンション管理士が専門性を活かし、より実践的な支援を提供するためのヒントを提供することを、この記事の目的とします。

2. 市内分譲マンションの実態

品川区のマンションストック状況

品川区内には、推計で約1,700棟、約63,000戸の分譲マンションが存在します。 区が令和4年度に実施した「マンション管理組合等実態調査」(以下、区アンケート調査)は、100戸以上の比較的大規模なマンション208件を対象に行われました。

区アンケート調査の回答(有効回答数47件)から、対象マンションのプロフィールを見ると、以下のような特徴がうかがえます。

  • 戸数規模: 「100~299戸」が最も多く、全体の76.6%を占めています。
  • 築年数: 「築10年未満」が36.4%と最も多いものの、「築30年以上」のマンションも27.3%存在し、比較的新しいマンションから高経年のマンションまで、幅広く分布していることがわかります。
  • ワンルーム: ワンルーム住戸を全く含まないマンションが76.6%と多数派ですが、全戸がワンルームというマンションも4.3%存在します。
  • 所有者の居住状況: 区分所有者が居住している割合は「51%~99%」が70.3%と最も多く、次いで「なし(0%)」、つまり投資用などで区分所有者が居住していないマンションが17.0%となっています。 逆に、賃貸住戸の割合は「1%~50%」が72.3%と最も多くなっています。

これらのデータは100戸以上のマンションを対象としたものですが、区全体のマンションストックにおいても、多様な規模、築年数、居住形態のマンションが存在し、特に高経年マンションの増加が今後の大きな課題であることを示唆しています。

アンケートから見る管理組合の現状

マンションの適正な維持管理に不可欠な管理組合の運営状況について、区アンケート調査の結果から見ていきましょう。

  • 総会の開催: 回答した全ての管理組合が、年1回以上の総会を開催していました。しかし、総会への実出席率(委任状・議決権行使書を除く)は、「10%以下」が45.9%、「11%~25%」が40.6%となっており、区分所有者の総会への直接参加意識は低い傾向にあることがうかがえます。 一方で、委任状等を含めた出席率は、「76%~99%」が58.6%、「51%~75%」が39.0%となり、多くの管理組合で総会の定足数は満たされているようです。
  • 管理規約の整備: 管理規約の整備状況について直接問う設問はありませんでしたが、近年問題となることのある「民泊」に関する規約上の扱いを見ると、「許可していない」が93.5%と圧倒的多数を占めました。 これは、多くの管理組合が比較的新しい課題にも対応しようとしている姿勢の表れとも言えますが、「記載なし」も4.3%存在し、規約の見直しが追いついていないケースもあるようです。
  • 管理者の選任状況: 管理者(理事長など)の属性は、「区分所有者」が81.3%と大半を占めており、組合員の中から選任される、いわゆる「理事会方式」が主流であることが確認できます。「管理会社」が管理者となっているケースは9.3%でした。

これらの結果から、多くの管理組合は基本的な活動(総会開催など)は行っているものの、組合員の運営への関与度の低さが課題として浮かび上がってきます。

アンケートからわかる課題

管理組合が抱える具体的な課題について、区アンケート調査では以下のような結果が出ています。

  • 管理運営上の課題:(複数回答)
    • 居住者の高齢化: 78.6%
    • 管理組合活動に無関心な居住者の増加: 61.9%
    • 賃貸住戸の増加: 21.4%
    • その他(役員のなり手不足、マナー問題、大規模修繕費、給排水管老朽化など): 19.0%
  • 発生したトラブル:(複数回答)
    • 居住者トラブル(騒音、振動、悪臭など): 97.8%
    • ごみ出し: 58.7%
    • 設備(不具合など): 32.6%
    • 防犯対策: 28.3%
  • 組織運営上の課題:(上位3つ選択、ポイント換算)
    • 役員の高齢化・なり手不足: 43ポイント
    • 活動従事者の固定化: 27ポイント
    • 個人情報配慮による交流不足: 26ポイント

これらのアンケート結果は、品川区内のマンション管理組合が直面している「高齢化」「無関心」「なり手不足」といった、全国的な課題と同様の構造を抱えていることを明確に示しています。特に、居住者間のトラブルが非常に多く発生している点は、コミュニティ形成やルール遵守の徹底といったソフト面での対策の重要性を示唆しています。

マンション管理士には、これらの実態を踏まえ、個々のマンションが抱える具体的な課題解決に向けた専門的なアドバイスや、管理組合運営を円滑に進めるためのサポートが求められています。

3. 長期修繕計画と資金計画の実態

マンションという資産の価値を維持し、安全で快適な居住環境を将来にわたって確保するためには、計画的な修繕の実施と、そのための資金計画が不可欠です。特に、品川区のように高経年マンションの増加が見込まれる地域においては、その重要性はますます高まっています。

長期修繕計画の策定状況

建物の経年劣化に対応するためには、長期的な視点に立った修繕計画(長期修繕計画)の策定が基本となります。国土交通省が定める「マンション管理適正化指針」においても、長期修繕計画の策定および定期的な見直しは、管理組合が取り組むべき重要な事項として位置づけられています。

品川区のアンケート調査では、長期修繕計画の策定率を直接問う設問はありませんでした。しかし、「管理運営上の課題」として「給排水管の老朽化による事故(漏水)多発」や「大規模修繕費」に関する懸念が自由記述で寄せられていることからも、計画的な修繕とその準備の重要性が現場で認識されていることがうかがえます。

一般的に、多くのマンションで長期修繕計画は策定されているものの、その内容が実態に即していない、あるいは定期的な見直しが行われていないケースも少なくありません。特に、新築時にデベロッパーが作成した計画をそのままにしている場合、修繕項目や周期、工事費用などが現状と乖離している可能性があります。

マンション管理士としては、担当する管理組合の長期修繕計画が適切に策定・運用されているかを確認し、必要であれば専門家(建築士など)と連携した見直しの提案を行うことが期待されます。

修繕積立金の計画・運用の課題

長期修繕計画を実行するためには、その裏付けとなる安定した資金計画、すなわち修繕積立金の適切な設定と徴収・管理が欠かせません。

しかし、品川区のアンケート調査でも「大規模修繕費」への懸念が示されたように、修繕積立金に関する課題は多くの管理組合で共通して見られます。具体的な課題としては、以下のような点が挙げられます。

積立金の不足: 計画されている修繕工事に対して、積立金の額が不足しているケースです。特に、新築分譲時に月々の負担感を抑えるために修繕積立金を低く設定し、段階的に値上げしていく「段階増額積立方式」を採用しているマンションでは、計画通りに増額改定ができず、将来的な資金不足に陥るリスクがあります。

一時金の徴収: 積立金不足を補うために、大規模修繕工事の直前に一時金を徴収するケースがありますが、区分所有者にとっては大きな負担となり、合意形成が困難になることもあります。

滞納問題: 修繕積立金の滞納は、管理組合の資金計画に直接的な影響を与えます。

適切な運用・管理: 積立金の保管方法や運用方法が適切でない場合、資金の安全性や効率性に問題が生じる可能性があります。

国土交通省が推進する「管理計画認定制度」においても、認定基準の一つとして、長期修繕計画に基づき、必要な修繕積立金が算出され、計画的に積み立てられていることが求められています。これは、国としても修繕積立金の計画性を重視していることの表れです。

マンション管理士には、長期修繕計画に基づいた適切な修繕積立金額の算定支援、積立方式の見直し提案(均等積立方式への移行検討など)、滞納対策、そして適切な資金管理方法に関する助言など、資金計画全般にわたる専門的なサポートが求められます。特に、将来の資金不足を防ぐための早期の対策提案は、管理組合の健全な運営に不可欠です。

4. 顕在化する管理不全リスクと要支援マンション

マンションの適正な管理を阻む要因が重なると、管理組合の活動が停滞し、最悪の場合、「管理不全」と呼ばれる状態に陥るリスクがあります。品川区においても、その兆候やリスク要因が見え隠れしています。

活動停滞、管理不在組合の現状

前述の通り、品川区のアンケート調査では、管理運営上の課題として「居住者の高齢化」(78.6%)、「管理組合活動に無関心な居住者の増加」(61.9%)が上位に挙げられました。さらに、組織運営上の課題としては「役員の高齢化・なり手不足」が最も深刻な問題として認識されています。

これらの課題は、管理組合活動の停滞に直結する大きなリスク要因です。役員の担い手がいなければ理事会は機能せず、総会も開催されなくなる可能性があります。また、区分所有者の無関心は、管理組合の意思決定を困難にし、必要な修繕や規約改正が進まない状況を生み出します。

さらに、アンケート回答の中には「管理者はいない」というケースも4.7%存在しました。これは法人化されている場合なども含まれる可能性がありますが、区分所有法で定められた管理者(通常は理事長)が存在しない、あるいは事実上機能していない「管理不在」の状態にあるマンションが、少数ながら存在することを示唆しています。

管理不全リスクの高まりと「要支援マンション」

「高齢化」「無関心」「なり手不足」といった問題は、単独でも管理組合運営の障害となりますが、これらが複合的に絡み合うことで、管理不全のリスクは加速度的に高まります。特に、建物の高経年化が進む中で適切な維持管理が行われなくなると、以下のような深刻な事態を招きかねません。

建物の劣化が急速に進み、資産価値が著しく低下する。

居住環境が悪化し、衛生面や防犯面での問題が発生する(スラム化)。

外壁の剥落や設備の故障などが放置され、居住者や近隣住民の安全を脅かす。

最終的には、建替えや敷地売却などの再生も困難になる。

このような管理不全のリスクを抱えているマンション、あるいはすでに活動が停滞・不在となっているマンションは「要支援マンション」と位置づけることができます。国や品川区などの自治体も、こうしたマンションの増加を問題視し、管理不全を未然に防ぐための対策(管理計画認定制度の導入、相談体制の強化など)を進めています。

しかし、行政の支援策だけでは限界があり、個々のマンションの実情に応じたきめ細やかなサポートが不可欠です。ここで重要な役割を果たすのが、マンション管理の専門家であるマンション管理士です。

マンション管理士には、管理不全の兆候を早期に発見する「目利き」としての能力が求められます。担当する管理組合はもちろん、地域内のマンションの状況にも注意を払い、活動停滞や役員のなり手不足といったサインを見逃さないことが重要です。

そして、リスクを発見した場合には、管理組合に対して現状の課題を分かりやすく説明し、管理適正化に向けた具体的な道筋を示す必要があります。これには、理事会運営のサポート、外部専門家(役員)の導入提案、行政の支援制度の紹介、区分所有者間の合意形成支援など、多岐にわたるアプローチが考えられます。

管理不全は、そのマンションだけの問題ではなく、地域全体の住環境にも影響を及ぼす問題です。マンション管理士が、管理不全の予防と早期対応の最前線に立ち、専門知識を活かして積極的に関与していくことが、今後ますます重要になっていくでしょう。

管理適正化に向けた修繕計画を進める上で、マンション管理士が注意すべき点の一つが、塗装や防水といった仕上げ工事の『土台』となる下地の状態です。この「下地補修工事」がなぜ重要なのかを見ていきましょう。

下地補修工事が必要な理由

建物の外壁やコンクリートは、経年劣化や気象条件の影響により、徐々にひび割れや欠損が発生します。これらの劣化を放置すると、以下のような問題が発生する可能性があります。

下地補修工事を行わない場合のリスク

  • ひび割れから雨水が浸入し、内部の鉄筋が腐食します。
  • タイルやコンクリートの剥落により、住民や通行人に危険を及ぼします。
  • 外壁の劣化が進み、建物の寿命が短くなります。
  • 下地が弱いまま塗装や防水工事を行うと、工事の効果が長持ちしません。
  • 建物全体の耐震性が低下し、大きな地震時に被害が拡大する可能性があります。

適切な下地補修を行うことで、建物の安全性を向上させ、長期的なメンテナンスコストを削減することが可能になります。

下地補修工事とは?他の工事との違い

下地補修工事とは、外壁やコンクリートの劣化を調査し、必要に応じて修繕を施す作業です。タイル面やコンクリート面に発生したひび割れや欠損箇所を特定し、それぞれに適した補修方法を適用します。これにより、外壁全体の安全性を確保し、その上に施される塗装や防水層が本来の性能を発揮できる状態を維持します。

この工事は、大規模修繕工事の中でも特に重要な基礎的な工程であり、補修が不十分な場合、後に行われる工事の効果が半減する恐れがあります。そのため、下地補修の精度が建物の耐久性に直結すると言えます。

相栄建総の下地補修工事サービス

相栄建総では、外壁やコンクリートの劣化状況を正確に診断し、最適な補修工事を提供しています。

当社の強み

  • 詳細な劣化調査と診断
    赤外線カメラや打診調査を活用し、目に見えない劣化も正確に把握します。
  • 最適な補修方法の選定
    劣化の種類に応じて、樹脂注入・モルタル補修・ひび割れ補修など最適な方法を適用します。
  • 耐久性を考慮した施工
    補修後の耐久性を最大限に高めるため、適切な材料を使用します。
  • 住民への影響を最小限に抑えます。
    工事のスケジュールを適切に調整し、住民の負担を軽減します。

下地補修工事の費用

下地補修工事の費用は、劣化の範囲や補修方法によって大きく異なります。ひび割れの補修、タイルの交換、コンクリートの埋め戻しなど、補修箇所や使用する材料によって単価が変動します。

相栄建総では、事前調査を徹底し、正確な見積もりを提示することで、予算に応じた最適な補修計画を提案します。

下地補修工事の期間

工事期間は、建物の規模や劣化状況によって異なります。例えば、外壁全体にわたる補修が必要な場合は数週間から数ヶ月かかることがあります。一方で、部分的な補修のみであれば、比較的短期間で完了することも可能です。

住民の皆様への影響を最小限に抑えるため、施工スケジュールを事前に共有し、計画的に進めます

下地補修工事の流れ

  1. 調査・診断
    劣化箇所を特定し、適切な補修方法を検討します。
  2. 補修計画の立案
    住民や管理会社と調整し、最適な補修方法とスケジュールを決定します。
  3. 補修作業の実施
    ひび割れ補修、タイル交換、コンクリート補修などを適切に行います。
  4. 最終確認・仕上げ
    施工後の状態を確認し、問題がないかをチェックします。

まずはご相談ください

下地補修工事は、建物の耐久性と安全性を維持するために不可欠な工事です。適切な補修を行うことで、建物の寿命を延ばし、資産価値を守ることができます。

相栄建総では、確かな技術と豊富な経験を活かし、高品質な補修工事を提供いたします。調査・診断のご相談やお見積もりは無料で対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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