2021年10月に認可された賃貸住宅修繕共済制度とは、経費計上の方法

1. はじめに
マンションや賃貸住宅の経年劣化による大規模修繕は、賃貸事業者にとって避けては通れない課題です。特に、老朽化による修繕工事には計画的な資金準備が必要で、計画の不備や急な修繕による負担がオーナーの経営を圧迫する可能性もあります。また、定期的に修繕を行わないと建物の価値が下がり、入居者の確保が難しくなるといった悪循環に陥りがちです。賃貸住宅のオーナーが事業の安定性を確保し、適切なメンテナンスを継続的に行うためには、長期的な視点での計画的な資金準備が欠かせません。
このような背景の中、2021年10月に「賃貸住宅修繕共済制度」が登場しました。
2-1 賃貸住宅修繕共済制度とは
賃貸住宅修繕共済制度の目的と概要
賃貸住宅修繕共済制度は、修繕共済と火災修繕共済を組み合わせた共済金制度で、賃貸住宅のオーナーが長期的な視点で修繕費用を積み立て、計画的に大規模修繕を実施できるよう支援することを目的としています。共済金の積み立てにより、建物の老朽化や劣化に備えることで、予想外の出費リスクを軽減し、賃貸事業の安定運営を支えます。また、地震などの自然災害による修繕もサポートしており、より幅広いリスクへの対応が可能です。2023年には補償範囲が拡大され、制度の利便性がさらに向上しています。
運営主体と信頼性
この制度は、全国賃貸管理ビジネス協会などの住宅関連3団体が「全国賃貸住宅修繕共済協同組合」を立ち上げて運営し、国からの認可も受けています。そのため、オーナーは信頼性の高い選択肢として活用でき、長期的な賃貸経営の安定を確保する手段として安心して利用できます。
加入対象
対象者: 加入対象者は賃貸住宅のオーナーで、個人・法人いずれの名義でも加入可能です。
対象建物: 対象となる建物は賃貸住宅全般で、戸建てやアパート、マンション、複合ビルなど、賃貸として運営される物件が含まれます。築年数や構造に応じた審査を経て加入が認められるため、耐久性の低い建物などには加入が認められない場合もあります。対象建物の条件を理解し、適切な建物であるか確認することが重要です。
共済期間
10年から50年の範囲で共済期間を選択でき、オーナーの修繕計画に合わせた柔軟な設計が可能です。長期にわたる資金積み立てができることで、建物のライフサイクル全体を通じて安定した修繕計画を維持することができます。
補償対象工事の範囲
2023年12月から、賃貸住宅修繕共済制度の補償対象が拡大され、従来の外装や屋根などの基本的な修繕だけでなく、給排水設備や共用部の設備更新なども新たに含まれるようになりました。これにより、建物全体の管理と維持に幅広く対応できるようになり、制度の利便性が向上しています。
補償対象工事の具体例として、以下のような修繕が含まれます:
- 外壁の再塗装・防水工事
- 屋根の防水や改修工事
- 給排水管の更新・補修
- エレベーターや共用部の照明交換
- 駐車場や外構設備のメンテナンス
これらの工事は老朽化に伴い定期的な更新が必要であり、建物の安全性や入居者満足度の維持に貢献します。
2つの加入コースと掛金
加入コースとして2つのコースが設定されています。コース選択の際には、物件規模や修繕計画の長期性、予算などを総合的に考慮する必要があります。また、入居率向上を目指す場合や将来的な資産承継を見据える場合には、長期的な保全を意識したコース選択が適しています。
- 戸数別モデルコース
住宅形態と戸数に応じたモデルコースが用意されており、小規模から大規模まで対応可能です。たとえば、20戸未満、20~50戸、50戸以上のような区分で、戸数に応じた掛金を設定します。 - 長期修繕計画コース
長期修繕計画書を提出し、予想される修繕費や補償希望額などから掛金を設定します。制度を活用して修繕の頻度やタイミングを具体的に把握することができ、効果的な管理が行えます。
2.2. 制度加入のメリット
将来修繕への計画的な備え
賃貸住宅修繕共済制度に加入することで、毎月一定額の積み立てを通じて、将来の修繕に備えた計画的な資金を確保できます。これにより、突然の大規模修繕に対応できるほか、修繕計画を立てやすくなり、事業としての賃貸経営を安定化させることが可能です。
天災による想定外の劣化にも活用
賃貸住宅修繕共済制度は、地震や台風などの自然災害による劣化や損傷にも対応しています。災害発生後の修繕費用が予測以上にかかる場合でも、補償を受けられるため、事業継続のリスクを軽減でき、オーナーの負担を減らせます。
相続・事業承継の検討にも有効
賃貸住宅の管理や運営は、オーナーの相続や事業承継にも関わる大きな問題です。賃貸住宅修繕共済制度を利用して計画的に積み立てを行っていると、相続時や事業継承時にスムーズな資産引き継ぎが行え、次世代への継承が円滑になります。これにより、後継者にとっても負担が軽減されます。
長期修繕計画の実施物件として入居率に貢献
制度に基づいた長期修繕計画がある物件は、入居者にとっても安心感があります。定期的なメンテナンスが行われることで、物件の見た目や設備の維持が保たれ、入居者の満足度が高まります。結果として、入居率の向上が見込め、安定した収益を確保しやすくなります。
資産価値の維持
大規模修繕を怠ると建物の資産価値は下がりますが、賃貸住宅修繕共済制度により定期的な修繕が行われることで資産価値を維持することができます。資産価値を保つことで売却時にも高評価を得やすく、オーナーにとっても有益です。
共済掛金を必要経費として計上できる
経費計上により、収益からの控除額が増えるため、所得税や法人税の負担が軽減されます。また、計画的な資金準備が会計上の安定にも寄与し、貸借対照表においても計画的な負担として処理可能です。これにより、賃貸経営がより計画的かつ安定的に行えるようになります。
3. 経費の計上方法
個人事業主の経費計上方法(白色/青色申告)
個人事業主として加入する場合、白色申告・青色申告のどちらでも共済掛金を経費として計上できます。青色申告では、経費計上による節税効果がより大きくなるため、税負担を抑えた運営が可能になります。定期的な支出が経費計上されることで、会計上もメリットがあると言えるでしょう。
法人の経費計上方法
法人として賃貸住宅修繕共済制度に加入する場合も、掛金を経費として計上可能です。法人税の控除対象にもなるため、毎年の税務処理において節税対策としても活用できます。また、法人にとっても積立方式が固定費として扱えることで、資金計画が立てやすくなる点も利点です。
4. まとめ
賃貸住宅修繕共済制度は、賃貸住宅オーナーが計画的に修繕費用を積み立てることで、長期的な建物の維持管理を安定させるための制度です。大規模修繕に備えられるだけでなく、天災による想定外の修繕費も補償の対象となるため、経営のリスクを軽減しつつ、事業継続性を高めることが可能です。
制度活用のメリットまとめ
1. 将来修繕への備え:計画的な積み立てにより、大規模修繕への備えができ、突然の出費リスクを低減。
2. 災害リスクへの対応:天災による修繕費も補償の対象となり、予期せぬ災害リスクにも対応。
3. 相続・事業承継時のメリット:積み立てにより、次世代への継承がスムーズに行え、後継者の負担を軽減。
4. 入居率の向上と資産価値の維持:計画的な修繕により物件の魅力が保たれ、入居率や資産価値が維持される。
5. 経費計上による節税効果:個人・法人ともに掛金を経費として計上可能で、税務上のメリットが得られる。
専門家への相談案内
賃貸住宅修繕共済制度の導入は、制度内容や建物の状況に合わせた詳細なプランニングが求められます。各種補償や経費計上のルールを活かして、安定した賃貸経営を行うためには、専門家の助言を得るのが最適です。
