神奈川県座間市のマンション管理実態と管理士が果たすべき役割〜現状・課題・適正化への道筋〜

はじめに
座間市では、近年、分譲マンションの高経年化が大きな課題となっています。2023年(令和5年)時点で、市内には278棟、13,462戸の分譲マンションが存在しており、そのうち築30年以上のマンションが167棟(約60%)、築40年以上が49棟(約17.6%)、さらに築50年以上が14棟(約5.0%)に達しています。これらの数字からも、座間市では築古物件の割合が非常に高く、今後さらに老朽化が進むことが予想されます。
国の統計によれば、今後10年で築40年以上のマンションが全国的に2倍以上に増加する見通しです。座間市も例外ではなく、20年後には築40年超のマンションが現在の5倍近くに膨れ上がるとされています。
こうした中、老朽化の進行だけでなく、区分所有者の高齢化、役員の担い手不足、管理組合の機能不全といった課題も複合的に発生しており、マンション管理の適正化は喫緊の課題となっています。
このような背景から、座間市は2024年(令和6年)4月に「マンション管理適正化推進計画」を策定しました。本計画は、2020年に改正された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に基づき、市内マンションの適正管理を進めるための指針として位置づけられています。
座間市は、国の基本方針や神奈川県住生活基本計画などとも整合を図りつつ、今後の急速なマンション高経年化に備え、管理不全リスクの低減や資産価値の維持向上に取り組む方針です。
本記事では、座間市におけるマンションの現状や管理組合の課題を整理したうえで、現場で活動するマンション管理士が、今後どのように支援や介入を行うべきかを考察します。マンション管理士として、地域における適正管理の担い手となるための実践的なヒントを提供することを目的としています。
2. 市内分譲マンションの実態
座間市のマンションストック状況
座間市内の分譲マンションは、1980年代後半から1990年代後半にかけて急増しました。その後は供給ペースが落ち着き、近年は年2〜3棟程度の新築供給にとどまっています。2023年時点での状況は次の通りです。
- マンション総数:278棟/13,462戸
- 築30年以上のマンション:167棟(60.0%)
- 築40年以上のマンション:49棟(17.6%)
- 築50年以上のマンション:14棟(5.0%)
地域別に見ると、「相模が丘地区」(81棟)に最も多く集中しており、次いで「相武台地区」(40棟)、「さがみ野地区」や「ひばりが丘地区」など、主要駅周辺や東部地区に多くの単棟型・高層型マンションが立地しています。一方、団地型マンションは、駅からやや離れた郊外部にも点在しています。
また、建築時期別に見ると、1983年以前に建設された団地型マンションが比較的多く、2000年代以降は単棟型の中高層マンションが主流となっています。
アンケートから見る管理組合の現状
座間市は今後、アンケートや現地調査を通じて、管理組合の実態把握を進めていく方針ですが、これまでの一般的な傾向や市内の特性から、以下のような課題が予測されます。
- 管理者(理事長等)の不在や高齢化による運営停滞
- 年1回以上の総会が未開催となっている組合の存在
- 管理規約が未整備、もしくは長期間改訂されていないケース
- 修繕積立金不足や資金計画の不備
特に、築30年以上のマンションにおいては、「管理不全予備軍」となる組合が増加するリスクが指摘されています。高経年マンションでは、住民の高齢化や空き住戸・賃貸化の進行により、組合役員のなり手不足が慢性化している現状があります。
3. 長期修繕計画と資金計画の実態
長期修繕計画の策定率
座間市の「マンション管理適正化推進計画」によると、市内の分譲マンションでは長期修繕計画の策定が進んでいない組合が依然として多く存在していることが指摘されています。特に、築30年以上のマンションが6割を超える現状において、長期的な修繕計画が未策定のままとなっていることは、今後の大規模修繕の遅延や資産価値低下の要因となりかねません。
座間市は、国の基準に準じて、「30年以上」の長期修繕計画の策定を推奨しており、特に築年数が進んだマンションについては、早急な対応が必要です。
現状、策定している組合であっても、「20年未満」や「25年未満」の計画にとどまるケースが多く、改訂や見直しを行わないまま放置されている事例も報告されています。
また、計画上の修繕スケジュールや費用見積りが、現状の物価上昇や資材費高騰に対応できていない問題もあり、内容のアップデートが急務です。
修繕積立金の計画・運用の課題
長期修繕計画と密接に関わるのが、修繕積立金の不足です。座間市内でも、積立金の水準が国のガイドラインを下回る管理組合が散見され、適正な資金計画の不備が課題となっています。
主な課題は次のとおりです。
- 積立金額の見直しが行われないまま低水準で維持されている
- 資材費・人件費の高騰を反映した修繕費の見積もりが行われていない
- 滞納住戸の存在により、計画通りの積立が進まない組合がある
特に、築30年以上の高経年マンションでは、必要な修繕時期に資金が不足し、一時金徴収や借入れを余儀なくされるリスクが高い状況です。
座間市としては、今後「管理計画認定制度」を活用し、適正な修繕積立金の確保と長期修繕計画の充実を管理組合に促していく方針です。
マンション管理士としては、こうした資金計画上の問題に対して、組合の現状診断とともに、積立水準の改善策を示す役割が求められます。
4. 顕在化する管理不全リスクと要支援マンション
活動停滞、管理不在組合の現状
座間市内では、管理組合の運営が停滞、あるいは機能不全に陥っているマンションが存在していることが想定されています。特に、築30年を超える団地型や郊外部のマンションにおいて、その兆候が顕著です。
座間市は、次のような組合を「要支援マンション」として重点的に支援する方針を掲げています。
- 総会や理事会が長期間開催されていない
- 管理者(理事長)不在、または形骸化
- 管理規約や使用細則が未整備・未更新
- 長期修繕計画未策定、または積立金不足のまま放置
このような状態のまま放置された場合、管理不全から法定手続き(地方自治体の勧告・助言等)に発展する恐れもあります。
座間市は今後、アンケート調査の実施や、マンション管理士等の専門家派遣を通じて、管理不全リスクの高いマンションへの早期介入を進める予定です。
管理士は、これらの現場で「外部支援者」として組合の再建支援や、管理不全予防のアドバイスを行うことが求められます。
座間市のように、今後も高経年マンションが急増する自治体においては、管理士による積極的な早期関与が、地域課題の解決の鍵となるでしょう。
5. 座間市が用意する支援策と管理士の介入ポイント
座間市は「マンション管理適正化推進計画」に基づき、市内マンションの管理水準向上を図るための支援策を展開しています。これにより、管理組合の適正運営と、管理不全の未然防止を目指しています。マンション管理士は、これらの施策を活用し、管理組合の実情に即した支援を行うことが期待されています。
管理計画認定制度の導入
座間市は、2024年度中に「管理計画認定制度」を導入予定です。この制度は、マンションの管理状況について、国のガイドラインに沿った評価基準を満たす管理組合に対し、市が「認定」を付与する仕組みです。
具体的には、以下の項目が認定基準とされます。
- 管理者・監事が選任されていること
- 年1回以上の総会が開催されていること
- 30年以上の長期修繕計画が策定されていること
- 適切な修繕積立金が積み立てられていること
管理計画認定を受けることで、マンションの対外的な信用力向上や、金融機関からの融資の際にプラスに働くことが期待されています。マンション管理士は、認定取得を目指す管理組合に対して、計画書の作成支援や、運営体制強化のアドバイスを担う役割が求められます。
アドバイザー派遣制度の活用
座間市は、管理組合の管理不全リスク低減に向け、外部専門家を派遣する「アドバイザー派遣制度」を2024年度から開始予定です。
この制度では、管理士が第三者的な立場から、運営が停滞している組合や、規約の整備が遅れているマンションに対し、具体的な改善提案や助言を行う仕組みとなっています。
派遣アドバイザーは、以下のような支援を実施します。
- 総会・理事会運営のサポート
- 長期修繕計画・資金計画の整備支援
- 管理規約や使用細則の見直し指導
- 役員選任や、コミュニティ活性化に向けた提案
座間市のこうした制度は、マンション管理士が直接的に介入しやすい仕組みであり、現場支援の強化と同時に、地域における管理士の役割拡大にも寄与します。
6. マンション管理士が果たすべき現場での役割
座間市が推進する支援策を背景に、マンション管理士には、より実務的かつ専門的な支援が期待されています。具体的には、次のような役割が重要です。
組合のアドバイザー・相談役
日常的な組合運営の課題に対して、管理士が相談対応や助言役として支援を行います。役員の担い手不足や、総会開催・議事運営の停滞など、組合が直面する多様な課題について、的確な解決策を提案することが求められます。
計画・資金面での支援
座間市が重点課題とする長期修繕計画未策定や積立金不足の解消に向け、管理士は、現状診断から改善案の作成、組合内での合意形成支援まで、計画的なマネジメントを実施する役割を果たします。
管理規約や組合ルールの整備支援
老朽化が進むマンションでは、管理規約が時代遅れのままとなっている例も多く、管理士は、現行法に即した規約見直し支援を通じて、組合の運営基盤を強化します。
管理不全リスクの予防・改善
座間市が重点課題とする管理不全マンションの早期把握と立て直し支援において、管理士は「外部からの伴走支援役」として機能します。特に、組合活動が停止した状態からの再生支援や、長期的なフォローアップが期待されます。
今後、座間市では管理士による「ハンズオン型支援」が強く求められており、地域の管理適正化推進の中心的な役割を担う存在として、マンション管理士の活躍が不可欠となります。
